はじめに:主体性喪失の問題
「社員が言われたことしかやらなくなってきて…以前の活気が感じられないんです」
これは先日、ある成長企業の幹部から聞いた悩みです。
多くの成長企業で見られる典型的な現象で、創業期には全員が主体的だったのに、規模拡大とともに徐々に受け身の姿勢が増えていくのです。
主体性が失われる3つの要因
1. 顧客との距離が遠くなる
組織の拡大により、多くの社員は顧客と直接接する機会が減少します。
顧客の喜びやフィードバックを直接感じられないと、「誰のために働いているのか」という根本的な動機付けが弱まります。
2. 評価基準の変化
成長企業では、数値目標が重視されるようになります。
測定しやすい指標が評価の中心になると、顧客満足や創意工夫といった数値化しにくい価値が軽視される傾向があります。
3. マニュアル化の罠
業務の効率化のためのマニュアル整備は必要ですが、過度なマニュアル化は創造性と主体性を奪います。
「マニュアル通りにやれば問題ない」という安心感が、「マニュアル以上のことをする必要はない」という意識を生み出すのです。
成功事例:主体性を取り戻した企業
従業員約120名の製造業の会社では、全社員が月に一度、実際の顧客を訪問する取り組みを始めました。
経理担当者も開発者も、顧客と直接対話する時間を持ったのです。
6ヶ月後の変化は驚くべきものでした:
- 業務改善提案が前年比で3倍に増加
- 部門を超えた自主的プロジェクトが5つ発足
- 顧客満足度が15%向上
- 離職率が7%から3%に低下
ある経理担当者は「数字だけ見ていた顧客が実際に会うと生き生きとした人間に変わった。自分の仕事の意味を実感できるようになった」と語りました。
あなたの会社でできる3つの具体策
1. 顧客接点プログラムの導入
全社員が顧客と接する機会を定期的に設けましょう
- 顧客訪問への同行
- ユーザーインタビューの実施
- 顧客サポート窓口の一時的担当
2. 「顧客の声」の見える化
顧客からのフィードバックを全社員が見られる仕組みを作りましょう
- オフィス内での顧客の声の表示
- 社内チャットでの顧客フィードバックの共有
- 週次ミーティングでの顧客の声の共有
3. 「なぜ」を共有する文化づくり
指示を出す際には背景や理由を共有する文化を作りましょう
- 「〇〇をしてください」ではなく「〇〇という理由があるので、△△をしてください」
- 定期的な目的共有の場の設定
まとめ:管理より意味づけを重視する
社員の主体性回復のカギは「意味づけ」です。
社員一人ひとりが自分の仕事の意味や価値を実感できる環境を整えることが重要です。
会社の規模が大きくなっても、創業期のような活気と主体性を維持することは可能です。
まずは顧客との距離を縮め、仕事の意味を再確認できる小さな取り組みから始めてみませんか?