はじめに:頑張っているのに売上が増えない理由
「営業活動を増やしているのに、売上が伸びない…なぜだろう?」
先日、ある会社の社長からこんな悩みを聞きました。
この悩みを持つ経営者はとても多いのです。
営業の人数を増やしたり、営業電話やメールの数を増やしたりしても、なかなか売上につながらない。
そんな経験はありませんか?
多くの会社は「量」を増やせば売上も増えると考えがちです。
でも、実際にはそうならないケースが非常に多いのです。
わたしは過去3年間で30社以上の中小企業のコンサルティングを行ってきました。
その経験から言えることは、売上が伸びない原因は「量」ではなく「質」にあることが多いということです。
実は、売上が伸びない会社には共通する問題があります。
顧客の声を聞いていくと、その原因が明確に見えてきました。
顧客の声から見えた3つの問題
売上が伸びない会社には、次の3つの問題がよく見られます。
問題1:自社の「強み」の思い込み
多くの会社は自分たちの強みについて思い込みがあります。例えば
- 「うちの技術力は業界一です」
- 「高品質な製品が自慢です」
- 「20年の実績があります」
しかし、お客さんが本当に価値を感じているのは別のところにあることが多いのです。
ある製造会社は「高い技術力」を売りにしていましたが、お客さんに聞いてみると「納期を守ることと柔軟な対応」が選ばれた理由だったのです。
解決法
- お客さんに「なぜうちを選んだのか」を直接聞いてみる
- お客さんの言葉を営業資料やホームページに使う
- お客さんの視点での強みを社内で共有する
ある印刷会社は既存のお客さん30社に話を聞きました。
その結果、「印刷の品質」よりも「急な変更にも対応してくれる柔軟性」に価値を感じているお客さんが多いことがわかりました。
そこで営業資料を変え、「柔軟対応力」を前面に出したところ、新規顧客の獲得率が上がりました。
問題2:顧客との「会話」不足
多くの営業場面では、商品の説明ばかりで、お客さんの話を聞く時間が少なすぎます。
典型的な商談では、営業担当者が話す時間が全体の70~80%になっていることも多いです。
商品説明、会社紹介、実績紹介と一方的に話し続け、お客さんに質問する時間はほとんどありません。
しかし、お客さんのニーズを知るには、聞く時間の方が大切です。
質問をし、お客さんの言葉に耳を傾け、本当の課題や望みを引き出すことが大事なのです。
あるIT会社は、プレゼンの時間配分を「説明60%・質問40%」から「説明30%・会話70%」に変えました。
すると、お客さんの本当のニーズがわかるようになり、提案の成功率が上がりました。
解決法
- 商談で、お客さんの話を聞く時間を増やす
- 「この商品はどうですか?」ではなく「今どんな問題でお困りですか?」と聞く
- お客さんの言葉をメモして、その言葉をそのまま提案に使う
ある建設会社では、営業担当者に「2分以上自分が話し続けたら止まる」というルールを設けました。
そして、お客さんの話を引き出す質問リストを作りました。その結果、お客さんのニーズをより正確に把握できるようになり、受注率が上がりました。
問題3:「効果」の伝え方
多くの会社は商品の「機能」や「特徴」を説明するだけで、お客さんにとっての「効果」や「メリット」を具体的に伝えていません。
例えば、こんな説明はよく聞かれます
- 「最新のAI技術を搭載しています」
- 「特許取得済みの技術です」
- 「業界最速のシステムです」
これらは確かに商品の特徴ですが、お客さんにとっての具体的なメリットが伝わっていません。
お客さんが知りたいのは「それが自分にとってどんな価値があるのか」ということなのです。
たとえば、「AI搭載の分析ツールです」という説明より、「このツールを使うと、月次レポートの作成時間が40%減り、その時間で新しいお客さんを増やせます」という説明の方がお客さんの興味を引きます。
解決法
- 商品の機能だけでなく、使った後の具体的な効果を数字で示す
- 既存のお客さんの成功例を具体的に伝える
- お客さんが得られるお金・時間・安心などのメリットを明確に伝える
ある人材サービス会社では、「優秀な人材を紹介します」から「採用コストを30%削減し、定着率が25%向上した実績があります」という説明に変更しました。これにより、提案から成約までの期間が短くなりました。
売上を上げるための5つの簡単な方法
自社が上記の問題に当てはまらないか確認し、売上を上げるための具体的な方法を紹介します。
1. お客さんに話を聞く
まずは5~10人の既存のお客さん(特に良い関係のお客さん)に連絡して、次のことを聞いてみましょう
- うちの商品・サービスを選んだ決め手は何でしたか?
- どんな点に価値を感じていますか?
- 使う前と比べて、具体的に何が変わりましたか?
- 改善してほしい点はありますか?
この際、重要なのは「本音」を引き出すことです。
「御社の製品は素晴らしいです」といった表面的な回答ではなく、具体的なエピソードや事例を聞き出すようにしましょう。
2. 営業トークを見直す
お客さんからの声をもとに、営業トークを見直しましょう
- 自社の思い込みではなく、お客さんが実際に価値を感じているポイントを強調する
- 商品説明の時間を減らし、お客さんの状況や問題を聞く時間を増やす
- 抽象的な言葉ではなく、具体的な数字や事例を使って説明する
特に効果的なのは、「お客さんの言葉をそのまま使う」ことです。
例えば、既存のお客さんから「急な依頼にも柔軟に対応してくれるのが助かる」という声があれば、それをそのまま営業トークに取り入れるのです。
3. 商談の時間配分を変える
商談の時間配分を次のように調整してみましょう
- 自社の説明:20~30%
- お客さんの状況や問題を聞く:30~40%
- 質問と話し合い:30~40%
具体的な進行例
- 簡単な自己紹介と今日の目的確認(5分)
- お客さんの現状と課題についての質問(20分)
- 課題に対する解決策の提案(15分)
- 質疑応答と次のステップの確認(20分)
4. 効果を具体的に伝える
自社の商品・サービスの効果を、次のように具体的に伝えましょう
- 数字で示せるもの(時間の削減、コスト削減、売上増加など)
- 数字で示せない効果(ストレス軽減、信頼性向上など)
- お客さんが得られるお金・時間・安心などの価値
例えば、「作業効率が上がります」ではなく、「データ入力の時間が50%削減され、月に約20時間の工数が削減できます。
その時間で約30件の新規顧客フォローが可能になります」というように伝えるのです。
5. 成功例を集める
既存のお客さんの成功例を次の観点で整理し、営業活動に活用しましょう
- 使う前の問題点(お客さんの言葉で)
- 使った後の具体的な効果(数字で示せるものは数字で)
- お客さんの声(直接の言葉をそのまま使う)
成功事例は、可能であれば写真やコメントを組み合わせると説得力が増します。
まとめ:顧客の声を聞くことが大切
売上を上げるカギは、自社の「思い込み」ではなく「お客さんの声」に耳を傾けることです。お客さんに話を聞いて本当のニーズを理解し、それに合わせた方法に変えることで、同じ営業活動でも大きく違う結果が出せます。
「顧客の声を聞く」ことは特別な知識や技術がなくても、誰でも始められる取り組みです。それでいて、効果は非常に大きく、多くの企業で短期間のうちに成果が表れています。
自社の強みの「思い込み」をやめ、お客さんとの「会話」を増やし、具体的な「効果」を示すことができれば、営業活動の質が上がり、自然と売上も上がります。
小さな一歩から始めてみませんか?まずは5人のお客さんに連絡して、「うちのサービスのどこに価値を感じていますか?」と聞いてみることをおすすめします。この小さな一歩が、あなたのビジネスを変えるきっかけになるかもしれません